1966年 手塚 治虫 自主制作作品

この展覧会の絵は原曲ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を基にして「展覧会の絵」の表題を生かして自由な発想でエピソードをおりこんだオムニバス映画です。  -手塚治虫ー
 
【プロムナード】 曲と曲の間に流れるプロムナード
promenade_1


      


画廊のなかを絵を見ながら進んでいく。一つの絵に
目が留まるとズームアップして暫くするとズームアウトそしてまた歩き始める何度か繰り返して最後に下の絵で手塚治虫のイメージが膨らむ
曲は5拍子と6拍子が繰り返されるロシア民謡風でトランペット・ソロで始まり3本のトランペットが主旋律を繰り返される。

ある朝早く社長室へ行くともう起きていた手塚治虫が居て下やんムソルギスキーの展覧会の絵と言う曲を知っているかと聴かれた。部屋の真ん中の白い螺旋階段を上がると小さな下を見下ろせる部屋がある、疲れたときに逃げ込む部屋だがそこにオーディオが置いてある。言い忘れたが2階の隠れ家より半分は吹き抜けに待っていて東側のかべに大きなスピーカーが埋め込まれている。いろいろのジャンルの音楽が好きだった手塚治虫は、音楽好きのわたしに徹夜で2人の時などよく音楽をかけてくれた、今日は展覧会の絵のレコードを聞かせてくれた。それが展覧会の絵との出会いだった。
 

この作品は現代の(当時の)英雄(ヒーロー)をテーマにしている。
Gnom[1]
 【こびと】       ジャーナリスト
評論家の○○氏は次々に批評を加えていく 人間味を欠いた姿を強烈に批判する
前半は木管楽器と弦楽器の旋律で、打楽器達が入る、後半木管楽器の旋律になる。
 松尾信吾
初めて聴いたのはムソルグスキー作曲の組曲「展覧会の絵」でピアノ曲であった。新宿の伊勢丹近くの○○レコード店にフランスの作曲家モーリス・ラヴェル編曲のオーケストラのレコードを注文してあるので取りに行って欲しいと頼まれたのはそれから少し後の日だった。手塚治虫はメガネの度が会わなくなったのでメガネを変えた、しかし使い勝手が悪く、そんな訳も有ってか雑誌のほうもすこしスランプ気味になっていた頃だった。次の日買ってきたレコードが自分が思っていたレコードと違っているので変えてもらってきてくれと言われた。常識として1度レコードの溝を通したものは返品できない時代であったさな如くレコード店では返品には応じられぬと突っぱねられたすったもんだしたがどうしても変えてはくれぬと言う、困り果ててとうとう手塚治虫に電話した。


  このキャラクターは当時の人が見れば唇の厚さなどで(いかりやちょうすけさんではありませんよ)すぐ誰のことか分かった。が抗議は来なかった。今と違って 大人が多かった時代だった。
肩を切って歩くと言う言葉があるが彼は両手で歩く。

最後は音楽にあわせてこそこそと両手で歩いて逃げていく。


 
promenade_2
【第2プロムナード】
ホルンと木管楽器でテーマが対話する。曲にあわせて絵を見ながら左にパーンして行く。そして次の絵へとズームインする。

 
【古城】        人工造園師
The old castle

 ビルの中にあるお花園 カリスマ造園師はご夫人たちの賞賛を得る。

アルトサックスとオーボエが主旋律をファゴットが入ってくる。ファゴットが良い。原曲のイメージの古城は、公園のイメージ。
 三輪孝輝
店長と手塚治虫との電話のやり取りあまりにも呆気なくレコードの取替えが出来る。
後のある夜のことそのレコードを手塚治虫から聞かせてもらうオーケストラ盤の展覧会の絵であった、そしてこの曲にデズニーのファンタジアのようなアニメを作りたいと言う事を聞かされる。 怖いもの知らずだった私は恐れ多くもそのデズニーのファンタジアを見たことが無いと言ってしまった。そのことでまさか手塚治虫に多大な出費をさせる羽目になるとは、思いもよらなかった。



 ビルに迷い込む旅に疲れ果てた昆虫(私はキリギリスだと思っていたなぜならばありとキリギリスの話で旅するキリギリスの姿が思い浮かんだからで、はっきり聴いていない。ピノキオのこおろぎのキャラクターにも雰囲気が似たものを感じていた)
 下に花園を発見する.....。

デズニーは何年かごとに昔の作品をマスターネガからメガを起こして新しいフィルムでまた封切りをする。丁度この年はファンタジアがそれの年に当たった。わたしが言った不用意な一言が切欠かはご本人に聞く由も無かったので不確かではないが結果は虫プロダクションの全社員に手塚治虫のポケットマネーでロードショーの切符を配ることになった。そしてわたしがその切符をデズニーまで買いに行った。
 わたしは何人かの同僚と一緒に池袋へ見に行った。確かにファンタジアはすばらしかったでもスコープではない昔の作品だその辺なにお勘違いしたかスコープで放映した。最後まで見たがさすがに、映画館に注意をした。そうしてもう1度見ることが出来た。
とあるビル
その中に迷い込んだ1匹の昆虫

旅の疲れとのどの渇きでフラフラ
 やっと見つけた草花や蜜.............

   それらは金属で出来ている作り物
 蜜を吸っている蝶を見つけ駆け寄る.......が。

   それも作り物。 
 登場する人工造園師

 人々の賞賛を受ける。
 それを横目に息絶える

 それを発見する人工造園師はつまみ上げて
   無造作に捨てる。
 ー人工造園ー
 
 【第3プロムナード】
始めと同じ トランペット・ソロそして、トランペットとトロンボーンで主題を力強く奏でる。
絵画を見ながら進んでいく時々絵にアップするが次の絵へと向かうそして1つの絵にズームアップする。
promenade_3
 
 整形外科医 【チュイルリーの庭】
Tuileries

主題が木管ではじまり、途中からヴァイオリンの奏でるやさしい旋律に受け継がれ、やがてまた主題が再現される。

松尾信吾

子供のいたずら書きの様な線画で描写される。
足の整形では鉛筆削りなども出てくる。
最後には本人の顔が崩れる。

 第5スタジオ からは、さほど遠くない手塚真さんも通われた南光幼稚園児が書いた。キャラクターを参考にして使った。
 
 工場 【ビドロ】
Bydlo[1]

引きずるような鈍重なリズムに始まる。続いてバス・テューバのソロで土俗的な旋律。クライマックスでは弦と木管の最強奏で表現される。

 工場主生産第一で 生産のためにどんどんロボットに入れ替える。最後には工場主自身も..............。

チャップリンのモダンタイムスを彷彿させるようなパロディー作品

大貫信夫
 
 【第4プロムナード】
promenade_4

フルートを主にした木管群によって寂しげに演奏され、やがて低弦にひきつがれる。再度 展覧会の作品をパーンしてなめていく。 
 
 チンピラ 【卵の殻をつけたひなどりの踊り】
Ballet of the Chicks in the shells

木管のスタッカートとヴァイオリンのピチカートでユーモラスに描かれる。

卵から帰ったひよこが、チンピラとなり やりたい放題、ウエストサイド ストーリーを思わせるような展開、やがて鷲の影が、頭上を横切る、一目散に、親鳥の影に逃げ込むひよこたち。

松尾信吾
 
 
 
 チャンピオン 【サミュエル・ゴールドベルグとシュミイレ】ballett 

前奏は、木管と弦のユニゾンで威圧的な様子を表現。後で弱音器つきのトランペットがおどおどした様子を表現。やがて低音のゴールドベルグがシュミイレを圧倒。

 大きなチャンピオンが街を凱旋する紙ふぶきの中を堂々と鼻を振って、行進する。
そして 試合の日が来て.....。

杉山卓
 
 テレビ・タレント 【リモージュの市場】
Limoges


リモージュ=フランス中部の街の名。
16分音符が続く。楽器もさまざまに置き換えられる。アタッカで次曲へ移る。

伴俊作
 
 
 ZEN 【カタコンプ】



Catacombae
古代ローマ時代の地下に作られたキリスト教徒たちの墓地。和音の連続で不気味な雰囲気。この和音は金管を中心に木管とコントラバスで作られる。轟音のように鳴り響く金管


 このシーンを書いたのは伴俊作だと思いますがZENと言う副題のとうり岩の上で座禅を組む坊主が止め絵で止まっていてたまに顔が下に下がるだけ、長い間そんなシーンやがた真っ黒になり次に突然明るくなると右のカット
手塚治虫とラッシュを見ていましたが思わず やったと大笑いしたことを覚えています。作画枚数の割りにかなりの効果があるカット、アイディアの勝利でした。
       手塚先生が後に描いた、たった3枚で アニメを作った例           1986 Osamu Tezuka
 
   

 葬式 【(カタコンプ)死者の言葉で死者とともに】
ソロ・トランペットが鎮魂の思いを込めて吹奏する。トレモロはヴァイオリンとヴィオラ。そして、プロムナードのバリエーションが木管と低音の弦にひきつがれる。第6プロムナードともいえる聞き慣れた旋律、

松尾信吾

厳かな、葬儀の参列が、歩いてくる。

 反対側からも、別の葬儀の、参列が、やってくる。

あくまでも、悲しみに暮れ、静かに歩んでくる。

 隊列が、静かに、すれ違う、その瞬間、喧嘩が!!

画面が、瞬間、真っ暗になる。
 画面が戻ると何事も無かったように、お互いの葬列は、通り過ぎていく。


 どうやら、このシーンは、海外に、出すときには、好ましくないと、カットしてしまったようだ。

 手塚先生らしい。
 
 戦争 【バーバ・ヤーガの小屋】



メンドリの足をもった魔女、バーバ・ヤーガ。
ラヴェル版ではたたきつけるような鋭い動機が木管と弦と打楽器で始まり、やがて金管楽器なども加えて激しく盛り上がる。中間部でトレモロがフルート、クラリネット、弦へと引き継がれていく。展開はファゴットとコントラバスによる。アタッカでフィナーレへ移る。 打楽器炸裂、割れるトランペット、

大貫信夫

イラストレーター大塚 清六 手塚治虫からその名前を聞くまでまったく存じかねる方であった。先生の代理でご自宅へご挨拶に伺い先生の意向をご説明いたしましたが。ご自宅には驚かされました。住所で自宅の場所へはすぐに行けたのですがコンクリートの塀ばかりで入口や玄関が見当たらなかったのです。公衆電話の見当たらず小一時間もかかってやっと公衆電話で連絡を取り入口を開けてもらいましたが塀のコンクリートと一体になっていてまったく入口が分からないようになっていました。通された部屋は和風で窓の外には竹があってとても情緒のある部屋でした。
   戦車
  戦闘機
   すきまからのぞく戦士の目
 病気で横たわる少女水を欲しがる
  水を取りに行く兵士  
   別の戦士が現れる

第5スタジオで作業は進められました。
このシーンを書くために作画のM子さんをモデルにデッサンをすることになり熱を入れすぎた作画家たちが肩を出すよう指示をして、だんだんエスカレートして恥ずかしがる彼女を泣かせてしまったと言う思い出があります。
(制作(ではなかった)として行き過ぎを注意すべきであったと後悔を今でもしています)
 かち合った2人の戦士は殺し合う
そして殺戮が始まり全ては...............。
 
 
キエフの大門】


kiew
聖歌ふうの旋律や、カリヨン(鐘)の音を模した動機がちりばめられていて、厳かで威風堂々とした主旋律をひきたてる。和音による主題が鳴り響き、突然、それが静かなコラール(クラリネットとファゴット)に置き換わる。プロムナードのバリエーションがトランペットで歌われて、壮大なフィナーレを迎える。




のちに冨田勲が編曲した、展覧会の絵を見て、ギターなど使用した現代風にアレンジしてあり大変気に入った。音響の田代敦巳さんに迷惑も顧みずおねだりしたが、忙しいまま手には入らなかった。
このことがきっかけで冨田勲はシンセサイザーによる多重録音で展覧会の絵のレコードを出しシンセサイザーの冨田勲になると言ったら言い過ぎか。
天国への扉が開いている。英雄たちが天国へと行進していく。それを見守る凱旋門の男たち。
やがて支えている門から出て男たちは行進に加わる。
支える男たちの、いなくなった門が崩れ始める。
女子供の悲鳴が上がる
振り返る男たち
やがて門へと駆け寄る。
そして門を支える。
安心する女子供

真の英雄は............?
この展覧会の絵は4種類のフルムがある
最初のフィルムは秋山 和慶 指揮東京交響楽団の
実写へとオーバーラップして終わった。
2本目は実写の部分を杉山卓さんとアニメに直した
3本目はベニス映画祭用に冨田勲さんが編曲した音楽付
4本目はそれを日本用にしたもの。
 
 
初号 及びロードショーされたフィルムでは エンディングの最後はオーケストラの演奏にオーバーラップした。
そのすぐ後 エンディングをアニメに代えた。
著作権の問題で 曲を冨田勲さん編曲のものに変えた。  海外の映画コンクールに出品
 
  制作 手塚治虫
総監督 手塚治虫
各話 演出 および作画
手塚 治虫
大貫 信夫
三輪 孝輝
松尾 伸吾
杉山 卓
伴 俊作
9話イラストレーション大塚清六
プロムナード設定内野純緖
動画
大井正子
飯島睦
福島春治
その他多数

 記念写真

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    打ち上げをかねたパーティー




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